Objective-Cでのメッセージングシステム
概要
Objective-Cのメッセージングのシステムを使い、
インスタンス間の通信を行うクラスを自作した。
NSNotification を応用した、メッセージ伝達を行う。
このクラスのインスタンスをもつオブジェクト同士は、
お互いのポインタを全く知らない(保持しない)状態での交信が可能になる。
一言で言うと、アプリ内疑似サーバ立ち上げ機能である。
通信の順序は、タイマー実行を行わない限り、NSNotificationのシステムにより、
通信完了まで確実に入力順が保たれる(メッセージの追い越しは発生しない)
メッセージングする同士のIdentifyを確認するためのキーとして、
Identifier(メッセージの送信者を特定するためのID、int値)を用意する必要がある。
セントラル/レシーバーという役割分担を行う必要がある。
セントラルからのメッセージングは、セントラル自身と指定したレシーバーへと伝達される。
レシーバーからのメッセージは、セントラルへと伝達される。
おまけで、下記実行を可能にしてある。
・遅延実行(別スレッドでの実行を可能にする)
・コマンドの入力(ヘッダクラス参照)
ダウンロード
http://homepage.mac.com/sassembla/download/messagesystem/com.zip
設計思想
このクラスに自発的に用意されている制限として、セントラルは一つ、レシーバーは一つあるいは
複数存在する事が想定されている。
各レシーバーからのメッセージは、必ずセントラルへ集約され、セントラルで状態によって各レシーバー
(か、セントラル自身)へとメッセージを伝達、処理を進める事が可能。
→このような区別が存在する理由は、下記2つ。
・完全にレシーバー間の通信を行う場合、メッセージ内容を把握する事が不可能になるため。
・メッセージの分別によってアプリケーションを複数のモジュールに分解し、
分業を可能にするための、最低限の仕組み化のため。
使用例
下記のように使用する。
1.初期化:
セントラル.h
//インスタンスを設定する
MessageSystem * messenger_default_reciever;
セントラル.m
//メッセージシステムインスタンスをセントラルとして初期化する。
messenger_default_observer = [[MessageSystem alloc] initWithCentralObserver:self centralNamed:@"" recieverNamed:@"" withIdentifier:0 withVersion:20100610 withSelector:@selector(defaultCentral:)];
//メッセージを受信したとき行うメソッド、- (void) defaultCentral:(NSNotification * )notification を用意する
- (void) defaultCentral:(NSNotification * )notification {
NSLog(@"defaultCentral");
NSMutableArray * array = (NSMutableArray *)[notification userInfo];
int sender = [[array objectAtIndex:MESSAGE_SENDER] intValue];
NSLog(@"sender_%d", sender);
int command = [[array objectAtIndex:MESSAGE_STATEMENT] intValue];
NSLog(@"command_%d",command);
}
レシーバー.h
//インスタンスを設定するMessageSystem * messenger_default_reciever;
レシーバー.m
//メッセージシステムインスタンスをレシーバーとして初期化するmessenger_default_reciever = [[MessageSystem alloc] initWithRecieverObserver:self centralNamed:@"" recieverNamed:@"" withIdentifier:1 withVersion:20100610 withSelector:@selector(defaultRecieve:)];
//メッセージを受信したとき行うメソッド、- (void) defaultRecieve:(NSNotification * )notification を用意する
- (void) defaultRecieve:(NSNotification * )notification {
NSLog(@"defaultRecieve");
NSMutableArray * array = (NSMutableArray *)[notification userInfo];
int sender = [[array objectAtIndex:MESSAGE_SENDER] intValue];
NSLog(@"sender_%d", sender);
int command = [[array objectAtIndex:MESSAGE_STATEMENT] intValue];
NSLog(@"command_%d",command);
}
2.実行
ケースa.
//セントラル.mのインスタンスにて、下記を実行すると、
[messenger_default_observer sendMessage:100,nil];
//セントラル.mのインスタンスにて、
defaultCentralメソッドが発動する。 defaultCentral~
→セントラルからセントラルへのメッセージ送付には
sendMessageメソッドを使用する。 宛先指定は特に
ない。
ケースb.
//セントラル.mのインスタンスにて、下記を実行すると、
[messenger_default_observer flushMessageTo:1 withNil:101,nil];
//レシーバー.mのインスタンスにて、defaultRecieveメソッドが発動する。
defaultRecieve~
→セントラルからレシーバーへのメッセージ送付には
flushMessageToメソッドを使用する。 宛先指定は
1の部分。
ケースc.
//レシーバー.mのインスタンスにて、下記を実行すると、
[messenger_default_reciever sendMessage:102,nil];
//セントラル.mのインスタンスにて、defaultCentralメソッドが発動する。
defaultCentral~
→レシーバーからセントラルへのメッセージ送付には
flushMessageToメソッドを使用する。 宛先指定は特に
ない。
MessageSystemのインスタンス同士に、クラス間の関連や、ポインタの共有が一切無い、ということに注目。
なのに通信内容がお互いのクラスに届いている。素敵すぎる。
そのほか
・NSオブジェクトを送る事が可能
sendMessage,flushMessageToメソッドともに、可変長でNSObjectを格納、発送できるようにしている。
[messenger_default_observer flushMessageTo:1 withNil:101, @"NSオブジェクトを継承したものなら、何でも送れる!", nil];
NSNumberやNSDictionaryも送れる。
・今のところ、単一の識別子しか使えない
セントラルとレシーバーは、このサンプルでは単一の組み合わせとして動いている。
セントラル一つ、レシーバ数は無制限だが、この組(セントラル+レシーバーxN)としてしか使えず、
ひとつこの組み合わせを作ったら、別のセントラル+レシーバーの組み合わせを使用する事が出来ない。
可能にするには、独自の名前でセントラル+レシーバーの組を実装できるように、関係性アイデンティファイの機能が必要。
→
centralNamed:@""などがあるのは、その実装前の準備。
・Deallocが非常に難しい
MessageSystemを持ったインスタンスをDeallocする際は、先にMessageSystemインスタンスをDeallocする必要がある。
遅延実行と絡むと、分解が非常に難しくなる。
また、MessageSystemを介した、MessageSystemインスタンスを持つオブジェクトのDeallocが可能。(なんて恐ろしい)
・ポインタを管理する必要が無いようにできたりできなかったり
Object * a = [[Object alloc] initWithMessageSystem];//Objectクラスは初期化時にMessageSystemインスタンスを初期化
と書くと、
記述したブロックを抜けても、MessageSystemを介してaにアクセスする事が出来る。
ぶっちゃけメモリリークだが、MessageSystemを介して管理が出来るのが強み。
Deallocをマスターすれば、いろいろなオブジェクトを、MessageSystemを介したシングルトンとして
意識せず実行する事が出来る。
今後の展望
要望、バグがあれば、是非ブログまで連絡ください。